目次
「実務者研修を修了したら、喀痰吸引ができるようになる?」
「医療的ケアを学んだけれど、ほかにも研修が必要?」
「利用者へ喀痰吸引を行うには、どのような手続きが必要?」
このような疑問を持つ方は多いのではないでしょうか
実務者研修では、「医療的ケア」の科目で喀痰吸引や経管栄養について学びます。そのため、実務者研修を修了すれば、すぐに介護現場で喀痰吸引等を行えると思っている方もいるかもしれません。
しかし、実務者研修を修了しただけで、実際の利用者に対して喀痰吸引等を実施できるわけではありません。
実務者研修では、医療的ケアに必要な知識や技術を講義・演習で学びます。介護職が利用者に対して喀痰吸引等を行うには、必要な実地研修を修了し、自分の立場に応じた認定や登録などの要件を満たさなければなりません。
この記事では、実務者研修を修了した方が実際に喀痰吸引等を行うために必要となる実地研修や手続き、実務者研修と喀痰吸引等研修との違いについてわかりやすく解説します。
実務者研修を修了しただけでは喀痰吸引はできない
結論からいうと、実務者研修を修了しただけでは、実際の利用者に対して喀痰吸引等を行うことはできません。
実務者研修には「医療的ケア」という科目があり、厚生労働省が定めるカリキュラムでは50時間以上の講義に加え、喀痰吸引や経管栄養
ただし、ここで行う演習は、シミュレータなどを使用して技術を身につけるものであり、実際の利用者に対して行う「実地研修」とは異なります。
そのため、実務者研修で医療的ケアを修了した後、業務として喀痰吸引等を行うには、勤務先などで必要な実地研修などを受ける必要があります。
実務者研修修了者の場合、大まかな流れは次のとおりです。

つまり、実務者研修の修了だけではなく、「必要な実地研修を受けているか」「どの立場で実施するか」「勤務先が必要な要件を満たしているか」が要件となります。
実務者研修の「医療的ケア」では何を学ぶ?
実務者研修の「医療的ケア」では、主に喀痰吸引と経管栄養について学びます。
喀痰吸引
喀痰吸引とは、自分で痰を排出することが難しい方に対して、吸引器などを使用して痰を取り除くケアです。
制度上、喀痰吸引等の対象となる行為には、次の3つがあります。
・口腔内の喀痰吸引
・鼻腔内の喀痰吸引
・気管カニューレ内部の喀痰吸引
実務者研修では、必要な知識を学んだうえで、シミュレータなどを使用した演習を行います。
経管栄養
経管栄養とは、口から十分な栄養を摂取することが難しい方に対し、チューブなどを通して栄養を補給する方法です。
制度上の対象となる行為には、次の2つがあります。
・胃ろうまたは腸ろうによる経管栄養
・経鼻経管栄養
こちらも講義と演習を通じて、安全に実施するために必要となる知識・技術を学びます。
実務者研修と喀痰吸引等研修の違い
実務者研修と喀痰吸引等研修は、どちらも喀痰吸引や経管栄養について学ぶため、違いがわかりにくいかもしれません。
実務者研修は、介護についてより専門的な知識・技術を身につけるための研修であり、そのカリキュラムの一部として「医療的ケア」を学びます。また、実務経験ルートで介護福祉士国家試験を受験する場合に、実務者研修の修了が必要です。
一方、喀痰吸引等研修は、介護職員等が一定の条件のもとで「医療的ケア」を実施するための研修です。
喀痰吸引等研修は基本研修と実地研修から構成され、実地研修では実際の利用者を対象として、医師・看護師等との連携・指導体制のもとで必要な行為を実施します。
整理すると、
実務者研修
=喀痰吸引等について講義・演習(シュミレーターを使用)で学ぶ
喀痰吸引等研修
=喀痰吸引等について講義・演習(シミュレータを使用)で学び、実地研修を修了する(実際の利用者にケアを行う)
という違いがあります。
喀痰吸引等研修そのものの仕組みや受講条件、費用、第1号・第2号・第3号の違いについて詳しく知りたい方は、「喀痰吸引等研修とは?受講条件・費用・資格取得までをわかりやすく解説」もあわせてご覧ください。
実務者研修修了後は喀痰吸引等研修が免除される?
実務者研修を修了している場合、「医療的ケア」をすでに履修済のため、喀痰吸引等研修の「基本研修」と同様の課程を修了しているとみなされ、基本研修が免除となります。
もちろん、「実務者研修を修了すれば、喀痰吸引等研修がすべて免除される」という意味ではありません。
実務者研修の医療的ケアでは、実際の利用者に対する研修が必須ではないため、実際に喀痰吸引等を行うには、必要な実地研修を修了する必要があります。
実務者研修修了後に喀痰吸引等研修を検討する場合は、医療的ケアを修了していることを伝え、どの研修を受ける必要があるのか確認しましょう。
実務者研修修了後に喀痰吸引を行うまでの流れ
ここからは、実務者研修で医療的ケアを修了した方が、実際に喀痰吸引等を行うまでの流れを見ていきましょう。
1.勤務先で必要となる喀痰吸引等を確認する
まず確認したいのが、「誰に」「どの行為を行う必要があるのか」です。
喀痰吸引等研修には、第1号研修・第2号研修・第3号研修があり、それぞれ実施可能なケアと対象者が規定されています。
どの研修が必要になるかは、勤務する施設や支援する利用者、実施する行為などによって異なるため、「とりあえず喀痰吸引等研修を受ける」のではなく、勤務先で必要となる行為を確認したうえで研修を選ぶことが大切です。
2.必要な実地研修を受ける
実務者研修で医療的ケアを修了していても、実際の利用者を対象とした実地研修を修了していなければ、介護職はその行為を業務として行うことができません。
実地研修では、実際の利用者に対して喀痰吸引や経管栄養を行い、必要な知識・技能を身につけているかについて評価を受けます。
第1号・第2号研修の基準では、対象となる行為に応じて、次の実地研修回数が定められています。

3.自分の立場に応じた手続きを行う
①介護職員等として行う場合
介護福祉士としてではなく、介護職員等として喀痰吸引等を行う場合は、必要な喀痰吸引等研修を修了し、都道府県知事から「認定特定行為業務従事者認定証」の交付を受けます。
【喀痰吸引等実施までの流れ】

喀痰吸引等研修を修了
↓
修了証明書等を用意
↓
都道府県へ申請
↓
認定特定行為業務従事者認定証の交付
具体的な申請方法や必要書類は、申請先となる都道府県の案内を確認しましょう。
②介護福祉士として行う場合

介護福祉士の場合は、介護職員等として認定特定行為業務従事者となる場合とは取り扱いが異なります。
医療的ケアまたは基本研修を修了したうえで、実際に行う喀痰吸引等について実地研修を修了する必要があります。
実地研修を修了した行為については、社会福祉振興・試験センターへ登録申請を行い、介護福祉士登録証に記載してもらうことができます。
なお、すでに認定特定行為業務従事者として喀痰吸引等を実施している介護福祉士については、この登録申請を行わず、引き続き同従事者として業務を行うこともできます。
自分がどの立場で喀痰吸引等を行うのかを確認し、それに応じた手続きを進めましょう。
4.勤務先の登録・実施体制を確認する
必要な研修や認定等の要件を満たしていても、どの介護施設や事業所でも自由に喀痰吸引等を行えるわけではありません。
喀痰吸引等を業務として行う事業所側にも、法律に基づく登録が必要です。
認定特定行為業務従事者に特定行為を行わせる場合は「登録特定行為事業者」、介護福祉士に喀痰吸引等を行わせる場合は「登録喀痰吸引等事業者」としての登録が関係します。
実際に仕事で喀痰吸引等を行いたい場合は、自分の研修・手続きだけでなく、勤務先が必要な登録を受けているかについても確認しましょう。
喀痰吸引は介護職員の判断だけでは行えない
必要な研修や手続きを終えたとしても、介護職員が自分の判断だけで喀痰吸引等を行えるわけではありません。
介護職が行う喀痰吸引等は、法律上、医師の指示の下に行うものとされています。
また、喀痰吸引等を実施する事業者には、医療関係者との連携や安全を確保するための体制を整えることが求められています。
たとえば、
・医師による指示
・医師や看護職員との情報共有・連携
・利用者ごとの計画の作成
・実施状況の記録・報告
・緊急時の連絡方法
・衛生管理
・利用者や家族への説明と同意
などが必要です。
喀痰吸引等は、利用者の生命や身体に関わる行為です。研修を修了するだけでなく、医療職と連携しながら安全に実施することが重要となります。
第1号・第2号・第3号研修はどう選ぶ?
喀痰吸引等研修には、第1号・第2号・第3号があります。
第1号研修
第1号研修は、不特定多数の利用者を対象とし、制度上定められた5つの特定行為すべてを対象とする研修です。
・口腔内の喀痰吸引
・鼻腔内の喀痰吸引
・気管カニューレ内部の喀痰吸引
・胃ろうまたは腸ろうによる経管栄養
・経鼻経管栄養
幅広い行為への対応を想定した研修となっています。
第2号研修
第2号研修も、不特定多数の利用者を対象とします。
第1号研修とは対象となる行為の範囲が異なり、気管カニューレ内部の喀痰吸引と経鼻経管栄養を除く行為を対象とします。
勤務先で必要とされる行為を確認したうえで選択することが大切です。
第3号研修
第3号研修は、特定の利用者に対して必要な特定行為を行うための研修です。
在宅の重度障害者など、特定の利用者と介護職員等との個別性の高い支援などを想定しています。
第1号・第2号とは研修課程や実地研修の考え方が異なるため、支援する利用者や業務内容に合った研修を確認しましょう。
なお、それぞれの研修の受講条件やカリキュラム、費用などは、「喀痰吸引等研修とは?受講条件・費用・資格取得までをわかりやすく解説」で詳しく解説しています。
実務者研修修了後に喀痰吸引等を学ぶメリット
実務者研修で学んだ医療的ケアに加えて、必要な実地研修を修了することで、実際の介護現場で医療的ケアに携われる可能性が広がります。
特に、喀痰吸引や経管栄養を必要とする利用者がいる介護施設や訪問介護などでは、必要な研修を修了し、医療的ケアに対応できる介護職員が求められる場面があります。
実務者研修で学んだ知識やシミュレータによる演習を、実際の利用者への支援につなげられることは大きなメリットといえます。
一方で、喀痰吸引等は利用者の安全に直接関わる行為です。
対応できる業務の幅を広げるだけにとどまらず、医療職との連携や安全管理を含めた専門的な知識・技術を身につけることが重要です。
実務者研修を修了したら確認したいこと
実務者研修修了後に喀痰吸引等を行いたい方は、次の点を確認してみましょう。
・実務者研修で医療的ケアを修了しているか
・勤務先ではどの医療的ケアが必要なのか
・第1号・第2号・第3号のどの研修が必要なのか
・必要な実地研修をどこで受けられるか
・研修修了後にどの認定・登録手続きが必要なのか
・勤務先が必要な事業者登録を受けているか
実務者研修で医療的ケアを修了している場合、最初から喀痰吸引等研修のすべての内容を受講する必要があるとは限りません。
受講を申し込む前に、実務者研修で履修した内容がどのように取り扱われるのか、登録研修機関などへ確認するとよいでしょう。
よくある質問
- Q.実務者研修を修了すれば喀痰吸引ができますか?
A.実務者研修を修了しただけでは、実際の利用者に対して喀痰吸引を行うことはできません。
実務者研修では医療的ケアの講義・演習を行いますが、業務として実施するためには、必要な実地研修を修了し、立場に応じた認定・登録などの要件を満たす必要があります。
- Q.実務者研修の医療的ケアでは何を学びますか?
A.喀痰吸引や経管栄養について必要な知識を学ぶほか、シミュレータなどを使用した演習を行います。
厚生労働省が定めるカリキュラムでは、医療的ケアについて50時間以上の講義と、所定の演習を行います。
- Q.実務者研修修了者も喀痰吸引等研修を受ける必要がありますか?
A.実際に喀痰吸引等を行うためには、必要な実地研修を修了する必要があります。
実務者研修で医療的ケアを修了している場合、基本研修が免除対象となるため、受講を検討している登録研修機関などへ確認しましょう。
- Q.喀痰吸引等研修の実地研修では何をしますか?
A.実際の利用者に対して、医師・看護師等との連携・指導体制のもとで喀痰吸引や経管栄養を行い、必要な知識・技能を身につけているかについて評価を受けます。
- Q.喀痰吸引等研修を修了すれば、どこの施設でも実施できますか?
A.研修を修了しただけでは、どの事業所でも自由に喀痰吸引等を行えるわけではありません。
本人に必要となる認定・登録等に加え、勤務する事業所にも法律上登録が必須であり、安全管理・医療職との連携体制などが求められます。
- Q.喀痰吸引は介護職員の判断だけで行えますか?
A.介護職員が自分の判断だけで行うことはできません。
医師の指示のもと、医師・看護師等との連携や事業所の安全管理体制のなかで実施します。
まとめ|実務者研修修了後は実地研修と必要な手続きを確認しよう
実務者研修では、「医療的ケア」の科目で喀痰吸引や経管栄養について講義・演習で学びます。
しかし、実務者研修を修了しただけでは、実際の利用者に対して喀痰吸引等を実施できるわけではありません。
実際に喀痰吸引等を業務として行うためには、必要な実地研修を修了し、自分の立場に応じた認定・登録などの要件を満たす必要があります。
また、本人だけでなく、勤務する事業所も都道府県への登録が必要であり、医療職との連携、安全管理のための体制が求められます。
実務者研修で医療的ケアを修了している場合、すでに履修した講義・演習が考慮される場合もあります。まずは自分の修了状況と勤務先で必要となる行為を確認し、必要な研修や手続きを整理しましょう。
未来ケアカレッジでは、実務者研修と喀痰吸引等研修を開講しています。
介護の専門知識や医療的ケアを学びたい方は「実務者研修」、実務者研修修了後に喀痰吸引等を実際の現場で行いたい方は「喀痰吸引等研修」と、ご自身の状況・希望に合わせて受講できます。
未来ケアカレッジ主催の実務者研修で「医療的ケア」を修了した方を対象とする喀痰吸引等研修もあります。
受講を検討している方は、受講条件やコース、開講日程を確認してみてください。
参考・出典
・厚生労働省「喀痰吸引等制度について」
・厚生労働省「喀痰吸引等研修」
・厚生労働省「社会福祉士及び介護福祉士法」
・厚生労働省「社会福祉士及び介護福祉士法施行規則」
・厚生労働省「介護職員等による喀痰吸引等制度Q&A」
・社会福祉振興・試験センター「実地研修を修了した喀痰吸引等行為の登録申請」


