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「介護施設の報酬はどのように発生しているの?」と疑問に思ったときは、介護報酬のしくみを学びましょう。
介護報酬のしくみを知ることで、介護施設の収入がどのように増えたり減ったりするのかをイメージできるようになります。
今回は、介護報酬のしくみを紹介したうえで、介護報酬改定の目的や令和6年度改定のポイントを踏まえた今後の変化などをお伝えします。現場に役立つ内容だけをシンプルに解説しますので、ぜひ参考にしてください。
介護報酬のしくみを知ろう

介護報酬とは、介護サービスの対価として事業者が受け取るサービス費用です。サービス費用は、各事業者が自由に決めるものではなく、国があらかじめ決めた「単位(ポイント)」をもとに金額が決まります。
介護報酬の計算式は、以下のとおりです。
「介護サービスの単位」×「地域ごとの単価」=サービス事業者が受け取る報酬
ただし、地域によって物価や人件費は異なるため、全国一律で地域単価を設定すると地域差が生じてしまうおそれがあります。
そこで国は、日本全国の市町村を8つの区分に分け、人件費の高い地域の1単位あたりの単価を高く設定し、地域差に配慮しています。
これを地域区分と呼びます。

たとえば、訪問介護の身体介護を20分以上30分未満で提供した場合、「その他」の地域では244単位×10円=2,440円が介護報酬となります。
一方、人件費の高い東京都特別区は単価の高い1級地です。そのため、244単位×11.4円=2,781円(端数切り捨て)となります。
介護報酬は、原則として9割が介護保険から支払われ、残り1割は利用者負担となります。
つまり訪問介護事業者は、上記サービス費用の9割を保険者(市町村・特別区)に請求し、残りの1割を利用者に請求することとなります。
介護報酬は、スタッフの給与や設備投資の元手になる、介護事業者にとって重要な収入源です。
※一定以上の所得がある人はサービス費用の2割または3割が自己負担となる
参考:厚生労働省|給付と負担について(参考資料)
令和6年度の介護報酬改定で何が変わった?

介護報酬改定とは、介護サービスの費用を見直すことです。
具体的には、社会情勢や人口構造の変化を受けて、各介護サービスの「基本報酬」や「加算率・減算率」などが3年ごとに見直されます。
令和6年度の介護報酬改定では、以下のテーマに沿って介護報酬が改定されました。
- ①地域包括ケアシステムの深化・推進(住み慣れた地域で介護や医療を受けながら暮らし続けられる仕組み)
- ②自立支援・重度化防止に向けた対応
- ③良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり
- ④制度の安定性・持続可能性の確保(介護保険制度を、将来も続けられるようにするための見直し)
この中でも、③の「良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり」は、介護の質と働きやすさを高めることを目的としたテーマです。介護職の待遇と深い関連があります。
改定ポイントをかんたんに整理
令和6年度の改定ポイントのうち、介護職の待遇と関わりの深いテーマを深掘りしてみましょう。
国は、介護業界の人材不足が深刻化している現状に対応するため、介護職が働きやすい環境づくりを進めています。
具体的な取り組みは次のとおりです。
- ・事業者が介護職の待遇改善に取り組むためのしくみを整備(介護職員等処遇改善加算の一本化)
- ・介護職の負担軽減に取り組む事業所を評価(介護ロボット、ICT等のテクノロジーを導入した事業所への加算)
- ・業務を効率化している施設では、職員の配置ルールを一部見直す
参考:厚生労働省|令和6年度介護報酬改定の主な事項について 3.良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり
介護職の待遇改善は、厚生労働省の社会保障審議会などで議論されており、国全体のテーマとして検討が続いています。
2025年11月21日の閣議後の記者会見にて、高市首相は「報酬改定の時期を待たず、前倒しで補助金による医療・介護等支援パッケージを緊急措置として実施します」と発表しました。
同年12月24日には、上野賢一郎厚生労働大臣から「令和8年度介護報酬改定について、改定率はプラス2.03%とします」と発表がありました。この改定率は、介護従事者に月1万円、介護職員に月最大1.9万円の賃上げが可能な水準です。
参考:厚生労働省|報道・広報
2026年に向けて介護はどう変わる?
令和6年度の介護報酬改定を踏まえたうえで、2026年の介護業界の変化を予測します。
- ・介護職の待遇改善は国の方針として今後も推進される見込み(最大月額1万9,000円=月1万円賃上げ+上乗せ分の賃上げ・介護職員等処遇改善加算の拡充など)
- ・多職種連携、記録の質向上、自立支援に取り組んだ事業所は「加算」で評価される
- ・介護DX化の推進(科学的介護システム『LIFE』によるデータ活用の推進・介護情報基盤の運用開始など)
なお、次回の介護報酬改定は令和8年度中の「期中改定(通常の改定時期を待たずに行われる、臨時の報酬改定)」を予定しています。従来どおりのスケジュールであれば令和9年度の予定でしたが、人材不足や物価高騰などの影響を踏まえ、臨時で改定される見込みです。
介護報酬の知識はキャリアアップにも役立つ

介護報酬に関わる改定は、事業所の収入に大きな影響をあたえます。
たとえば、令和6年度の改定では、訪問介護の基本報酬が引き下げられました(全体の改定率はプラス1.59%)。
これは訪問介護事業者が、「改定前と同じ稼働をしても全体の収入が減る可能性がある」ことを示しています。
介護報酬のしくみを理解している介護職は、こうした経営の視点も持てるため、サービス提供責任者や管理者といった役職者の道が開かれる可能性があります。
介護DX化が推進され科学的介護が普及しつつある現在、制度に理解のある職員の必要性は高まっているのです。
制度を知ることで現場の困りごとが解決しやすくなる
介護報酬には、1回の利用ごとに発生する「基本報酬」以外に、条件を満たすことで取得できる「加算」があります。
事業所が算定している加算に精通していると、「なぜこの記録を残すのか」「どうして家族に説明して同意を得なくてはいけないのか」といった根拠をつかめるでしょう。
業務の根拠を理解していると、記録のミスや漏れの防止につながります。利用者や家族に重要事項説明書の内容を伝える際も、論理的にわかりやすく話せるはずです。
つまり、制度を理解している介護職員は、介護業務とともに事業所の運営に貢献できるようになります。
まとめ

介護報酬の知識は介護施設の運営に役立ちます。特に、事業所の経営安定化や現場スタッフが安心して働ける職場づくりを進めたい方にとっては、必ず身につけたい知識です。
介護業界をより良くするため、賃上げ・デジタル化(介護DX)科学的介護を進める議論は現在も進んでいます。制度が変わる中で、介護報酬のしくみやケアの基準を理解して働く職員の必要性は高まるでしょう。
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初任者研修講座では、介護の基礎技術や考え方を学べます。実務者研修講座を受講すると、制度への理解が広がるでしょう。介護福祉士講座では報酬やサービス体系まで踏み込んだ学習によって、事業所の運営や現場の判断に役立つ知識を身につけられます。
「介護職として自信を持って長く働きたい」という方は、ぜひこの機会に未来ケアカレッジの講座受講を検討してみてください。



